前回の記事では、40・50代から考えておきたい「NISAの出口戦略」について、考え方を中心にお話ししました。
今回はその続編として、「実際の暮らしの中で、お金の使い方はどう変わっていくのか?」を、私自身の経験や価値観を交えながら整理してみたいと思います。
老後のお金は、ずっと同じ目的・同じペースで使うものではありません。年齢とともに、体力も気力も、家族との距離感も変わっていきます。
だからこそ大切なのは、その年代に合ったお金の使い方に、少しずつシフトしていくことだと感じています。
老後のお金の考え方を全体から知りたい方は、
▶︎ 「お金でもめたくない」が本音。40・50代から描く、家族を困らせないNISAの出口戦略
なぜ今「老後のお金の使い方」と出口戦略を考えるのか
私自身、ここまでお金の使い方を深く考えるようになったのには、理由があります。
これまでの私は、「家族が優先」「子どもが最優先」が当たり前でした。夫の顔色をうかがいながらお金を使い、自分のことはいつも後回し。少し生きずらさを感じながらも、それが普通だと思っていました。見て見ぬふりをしていたのかもしれません。
ところが、夫婦でのお金に対する価値観の違いがきっかけで、関係が大きく揺らぎました。その出来事を通して、「このままの自分でいいのかな」「私はどう生きたいのかな」と、初めて真剣に自分を見つめ直す時間を持つことになりました。
幸い、投資信託だけは40歳手前からコツコツ続けていて、気づけば資産は、私が必死に頑張らなくても“時間”が育ててくれていました。
そんな中、身内が多額の資産を残して亡くなり、兄弟間で相続をめぐって少し揉めている話を聞いたとき、強く感じたのです。
「どれだけお金があっても、あの世には一円も持っていけないんだな」と。
ある程度の資産を築いたなら、残すことよりも、生きているうちにどう使うかの方がずっと大切なのではないか。やりたいことを我慢したまま人生を終える方が、後悔が残るのではないか。
そう考えるようになってから、私にとっての出口戦略は、単なるお金の話ではなく、「自分の人生をどう終えたいか」を考えることになりました。
60代|老後資産の土台を整える時期
60代は、私の中では迷いなく「人生のゴールデンタイム」です。
- 仕事や子育てが一段落する
- まだ体力があり、動こうと思えば動ける
- 時間を比較的自由に使える
この時期に一番避けたいのは、「お金はあるのに、使わずに我慢してしまうこと」。
親世代を見ていて感じるのは、「あのとき行っておけばよかった」「元気なうちにやっておけばよかった」という後悔の多くは、お金よりもタイミングに原因があるということです。
60代でお金をかけたいもの
- 体力が必要な場所への旅行
- 新しい趣味や学び直し
- 夫婦・子ども・孫との思い出づくり
NISAで増やしてきたお金も、この時期は「減らさないこと」より、使いながら楽しむことを大切にしたいと思っています。
60代は、お金を守る時期ではなく、人生を広げるために使う時期です。
70代|お金の管理をシンプルにする時期
70代に入ると、お金との向き合い方が少しずつ変わってきます。
60代では「やりたいことを楽しむ」ことを大切にしてきたけれど、70代は日々を穏やかに、安心して過ごせる状態を整えることが主役になります。
体力や健康状態には個人差が出やすくなり、
- 医療費や通院が気になり始める
- 遠出や無理な予定は控えたくなる
- 「今後いくらあれば安心か」を意識し始める
そんな変化を感じる人も多い時期です。
この年代で大切なのは、
お金を増やし続けることより、「必要なときに迷わず使える状態」にしておくこと。
70代のお金の使い方・考え方のポイント
- 大きな贅沢より、日常の快適さを優先
- 住まいのメンテナンスや安全対策にお金を使う
- 家事代行や移動を助けてくれるサービスを上手に頼る
「節約しなきゃ」と我慢するよりも、お金でラクできるところはラクする。
それが、結果的に心と体を守ることにつながります。
資産運用についても、値動きの大きさに振り回されない工夫が大切です。
すべてを売る必要はありませんが、生活費の数年分を現金や比較的安定した資産に移しておくことで、「もしものときも大丈夫」という安心感が生まれます。
70代は、「お金をいくら増やせるか」より、「お金のことで不安にならない状態をつくる」時期。
この先の80代を見据えて、少しずつ“たたむ準備”を始めていく、ちょうどいいタイミングでもあります。
80代|お金を「残す」より「伝える」ことが大切になる
80代で一番大切だと感じているのは、資産管理を、できる限りシンプルにすることです。
私自身、親と資産の話を思い切ってしたことがあります。信頼関係があったからこそできたことかもしれませんが、実際に話を聞いてみると、通帳や定期預金が複数の銀行に分かれていたり、公共料金等がそれぞれ別の通帳から引き落としされていたりと、家族が把握するにはかなり複雑な状態でした。
唯一救いだったのは、通帳や保険関係の書類が一か所にまとめられていたことです。それでも、「もし今なにかあったら、家族は相当困るだろうな」と感じました。
その経験から、通帳は一つにまとめ、不要になった口座は解約してもらいました。ほんの少し整理しただけで、親自身も「分かりやすくなって安心した」と話してくれたのが印象的でした。
仲の良かった家族が、お金のことで疑心暗鬼になってしまう。それは、誰にとってもつらいことです。相続でもめる話を耳にするたびに、元気なうちの準備がどれほど大切かを実感します。
80代で意識したいこと
- 口座や金融商品をできるだけ減らす
- 公共料金や年金の入出金を一つの口座にまとめる
- 資産の置き場所や連絡先を紙一枚にまとめる(エンディングノートなど)
- 誰に何をどうしたいのか、言葉で伝えておく
この段階での出口戦略は、自分のためだけのものではありません。残された家族に、迷いや不安、争いの種を残さないこと。
それは、お金を多く遺すことよりも、ずっと大きな「家族への優しさ」だと、私は感じています。
実際には、ここに書いた整理や見直しは、80代になってから始めるよりも、50代・60代の元気なうちに少しずつ進めておく方が、本人にも家族にも負担が少ないと感じています。
子どもにお金は遺さない。でも、全力で応援する
私は、「子どもにお金を遺すつもりはない」と考えています。
その代わり、教育費や、やりたいこと、人生の糧になる経験には、お金を惜しまないと決めています。
若い頃の学びや経験は、何倍にもなってその人の人生を支えてくれるからです。
老後のお金は、残すためではなく、自分と家族が納得して使い切るためにある。今はそう思っています。
まとめ|後悔しない老後のために今できること
老後のお金をひとまとめに考えると、不安になります。でも、年代ごとに分けて考えると、やるべきことは意外とシンプルです。
- 60代:自分のために、思い切って楽しむ
- 70代:暮らしを整え、安心感を優先する
- 80代:家族のために、シンプルに整理する
お金の出口に、正解はありません。でも、「どう生きたいか」「家族とどうありたいか」という軸があれば、お金の使い方は自然と決まっていくはずです。
お金で悲しい思いをしない。そして、大切な人にもさせない。
この続編が、あなた自身のこれからの人生を考えるきっかけになれば嬉しいです。


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